研 究

代数学研究室

プロフィール(略歴)

1973年生まれ、京都大学理学部から同大学院理学研究科・数学数理解析専攻に進学し、博士後期課程を修了,博士(理学)。京都大学大学院理学研究科・助手/助教,大阪大学大学院理学研究科・准教授,京都大学大学院理学研究科・准教授を経て、2015年より現職。この間に、ジュシュー数学研究所にてフランス国立科学センター・客員研究員(CNRS chercheur associé)、パリ第6大学・客員教授(professeur invité)など

専門分野
  • 代数幾何学
  • 数論幾何学
  • 複素多様体論
代数学研究室
川口 周 教授

代表的な仕事

代数多様体はいくつかの多変数多項式が零であるという代数方程式によって定義されます。これらの代数方程式が有理数の解をもつとき,その解を代数多様体の有理点といいます。代数多様体の有理点の性質を調べるときに、有理点の算術的な複雑さを測る「高さ」という量は基本的です。私は、代数多様体がそれ自身への良い写像をもつとき、通常の高さを少し変えることによって写像に関してよく振る舞う高さが構成できることを示し、それを用いて代数多様体の有理点の写像に関する算術的な性質を導きました。これらは次の場合を含みます。

  • 代数多様体がアフィン空間で、写像が正則な多項式同型写像の場合(アフィン平面と Hénon 写像の場合を含む)
  • 代数多様体が射影的な非特異代数曲面で、写像が正の位相的エントロピーをもつ同型写像の場合
  • 代数多様体が(偏極的とよばれる)複数の良い写像を持つ場合
(これらの研究によって,2008年日本数学会・建部賢弘特別賞、2010年文部科学大臣表彰・若手科学者賞を受賞しました.)代数多様体と自己写像の組は、離散時間の自律系の力学系を記述すると考えられるので、上の研究は,離散力学系の数論的な側面の研究とみなすこともできます。一般に、代数多様体と自己有理写像が与えられたとき、代数多様体の有理点の写像に関する高さの増大度を、その点の算術的次数とよびます。一方で、複素力学系の研究において、写像の力学系次数とよばれる基本的な量があります。私は、 米国ブラウン大学の Joseph H. Silverman 教授との共同研究で,有理点の算術的次数が力学系次数を超えないという一般的な不等式を示しました。さらに、同じく共同研究で、アーベル多様体とよばれる代数多様体に対して、算術的次数と力学系次数の関係を詳細に調べました。

研究テーマ

(1) アラケロフ幾何
(2) 代数・数論力学系と高さの理論
(3) 解析的トーション
(4) 非アルキメデス的幾何とトロピカル幾何

研究内容

x, y を変数とし、代数方程式 y2 - x3 + 2 = 0 を考えてみましょう。これは、代数曲線(1次元の代数多様体)の中でも「楕円曲線」とよばれるものの例です。この方程式の複素数の範囲での解集合(複素多様体)は、左の図のようなドーナツから1点を取り除いた形をしています。実数の範囲での解集合は、右の図のような形をしています。

complexvalued
realvalued
有理数の範囲での解 (x, y) は (3, ±5), (129/100, ±383/1000) など無数にあります。また、p を素数とし、上の方程式の p を法とする整数解の集合を考えることもできます。(すなわち、y2 - x3 + 2 ≡ 0 (mod p) を満たす整数 (x, y) を p を法として考えた集合です。Fp = {0, 1, ..., p-1} に p を法とした演算を入れるとき、この集合は Fp の範囲での解集合を考えていることになります。)

一般に、代数多様体はいくつかの多変数多項式が零であるという代数方程式によって定義されます。いま、多項式の係数は整数であると仮定しましょう。このとき、上と同様に、さまざまな範囲での解集合を考えることができます。さらに、代数多様体の素数 p における非アルキメデス的な解析化という操作があり、その解析化の中に多面体をいくつか組み合わせたようなトロピカル多様体とよばれるものが埋め込まれています。私は、このようなさまざまな範囲で考えた解集合の性質や、それら解集合の間の相互の関係に興味を持っています。詳しくは述べませんが、「研究テーマ」の (1)-(4) はいずれもこの興味に関係しています。((2)については、「代表的な仕事」の欄を参照して下さい。)なお、ここでは非常に一般化した書き方をしていますが、実際の研究では、多変数多項式にさまざまな条件をおいて考えます。また、代数、幾何、解析のさまざまなことを使って考えます。

受験生へメッセージ

日本では「純粋数学」と「応用数学」は分かれていることが多いです。本学科は、小さいながらも、「純粋数学」と「応用数学」が一緒になっていて、自分の興味に合わせて選択しながら学ぶことができます。意欲のある皆さんを待っています。